八郎だ(Twitter:@eightblog_hachi)
毎日の人も、久々の人も、初めての人も
ここへの訪問に深謝だ。
この物語は注文住宅について何の知識も無い夫婦が
思い立って注文住宅を建てようとしたら
どうなったのかを描いた「フィクション」だ。
良かったら立ち寄っていただきたい。
前回のあらすじ。
家づくりの資金が足りない。
その額500万円。
でも、自分で調達できる器量も力量も無い。
そうして考えた結果
親から資金援助してもらおうという
40歳過ぎて親のスネをかじる作戦に出ようとしている俺。
その発想がただでさえ、人としてクズの部類なのに
更にクズなのは、オヤジの介護を避けるように
半年も実家に手伝いはおろか
連絡すらしていなかったと言う事実。
しかし、背に腹は代えられぬ、という思いで
半年ぶりに実家の門を叩くことに。
そこには、俺の想像を遥かに越える
光景や事実が鎮座していたのであった。
ちなみに最初からこの話を読んでみたい
という奇特な方にはこちらのリンクを紹介しよう。
それでは、今日も俺の家の話を始めよう。
【悲報】オヤジ、俺の事がわからない
八郎「オヤジって。。。最近こうなの?」
弟「今日は。。。結構酷いかな」
オフクロ「会話できるときは普通に出来るんだけどね」
母と息子どもがギャーギャー騒いでも
オヤジはそこに加わる事も悪態をつくこと無く
ただただテレビを眺めていた。
プロ野球の中継をやっていたのだが
選手がホームランをかっ飛ばしても無反応。
最早、外界の情報が脳に届いているのかも怪しい感じだ。
弟「アニキ、もっと驚くぞ、いいか」
八郎「なんだよ。。。」
弟がそう言うと、突然
弟「オヤジ!オヤジ!!あれ、お母さん、わかる?」
と突然聞こえないヤツは誰もいないだろうと言うくらいの
大声でオヤジに話しかけた。
それでも、オヤジの反応は遅かった。
1回目の呼びかけの2秒くらい後に
ようやくテレビに向けられていた視線が
弟に投げかけられた。
どこかの海外に生中継で繋がっているようなタイムラグだった。
弟「あれ、お母さん、わかる」
オヤジ「(コクリ。。。コクリ。。。)」
オヤジはゆっくりアクションをした。
しかし、俺はオヤジが声を発さなかったことにビビった。
「ああ」とか「うん」も言わず
首を力なく縦に2回振るだけ。
弟「俺、わかる?弟だよ、おとうと」
オヤジ「(コクリ。。。コクリ。。。)」
目の前に弟がいるのに、やはりオヤジは
首を弱々しく縦に振るだけだった。
。。。イヤな予感がする。
弟「こっち、長男の八郎だよ、わかる?ハチロー」
オヤジ「」
八郎「」
まずオヤジが固まり、その後俺も固まった。
もしやオヤジ、俺の事を忘れてしまったのか?
血管性認知症の進行
オフクロ「大丈夫よ、忘れているのは今日だけだから」
八郎「今日、だけ。。。?」
オフクロが何を言っているのかよくわからない。
オフクロ「ここ最近、お父さんの反応が今日みたいに極端に鈍くなることがあるの」
弟「俺たちは『脳にモヤがかかっている』状態って勝手に言っているんだけどね」
オフクロ「そういう時は、反応も鈍くなり、声も発しなくなり」
オフクロ「認知症の症状も進んだような感じになるの」
八郎「マジか。。。」
オフクロ「モヤがかからないときは、普通に会話もするのよ、まあ、昔みたいに快活に話したり、ジョークはもう出ないけどね」
弟「アニキ、安心しろ、この前は俺の事もわからなかったから」
八郎「。。。」
弟「トイレも風呂もOMTチェーンジも結構やってるのにな」
※「OMT」とは「オムツ」の隠語。医療用語ではないのであしからず
オフクロ「でもね、この『脳にモヤがかかった状態』の日が少しずつ増えてきてるのよね」
弟「症状は着実に進行しているんだよなあ」
そうだったのか。。。ここまで悪くなっているとは。
脳血管性認知症とは言われていたが
こうしてどんどん進行すると
果ては自分の妻や息子も認識できなくなるのか。。。
冷たい手が俺の心臓を握られるような感覚に陥った。
オヤジの介護、逃げている場合ではない。
ひょっとすると、俺らとオヤジの間に
残されている時間と言うのは
そんなに多くは無いのかもしれない。
更にビビったのは、オヤジの食の細さである。
弟が普通の食事を細かく切り分けて少量ずつ口に運ぶ。
もう自分の手で自ら食べる事は殆ないらしい。
昔、最初に脳梗塞を起こした時は
箸を思うように使えずに、激昂していた父を思い出すが
今や、自分で食べる事すらままならない。。。
しかも意思表示も、もう食べたくないときは
表情をしかめ、顔を背ける。。。
年端のいかない子どものようなリアクションに
ただただ、唖然とするばかりだった。
絶望する俺
昼飯の後、オヤジはルーティンの昼寝に。
オヤジに買ってきたはずの和菓子を
オフクロと弟との3人で食べながら
オフクロはある物を出してきた。
オフクロ「今日は嫁ちゃんさんもいないから、あんたにちょっと見てもらいたい物があって」
そう言いながら、1冊の大学ノートをテーブルに差し出す。
表紙には「終活ノート」と書かれてある。
そんな物まで用意されていたのか。。。
俺は実家にきて、唖然としっぱなしである。
八郎「お前、これ知ってた?」
弟「まあな、でもオフクロから見せてもらったのは今年になってからだ」
オフクロ「実はお父さん、3年くらい前から3か月くらいかけて毎日書き続けたものなの」
八郎「見ても、いいの?」
オフクロ「ええ。。。本当は俺が死ぬまで見せるな、って言われたんだけど」
オフクロ「最近のお父さんの状態を見ていると。。。あななたちも知っておいた方がいいかな、って思って」
八郎「そうなのか。。。」
弟「俺はもう全部見たから、アニキ独占して読んでもらっていいよ」
八郎「わかった」
大学ノートの表紙には
「2015.04.01~7.13」と書かれてある。
エイプリルフールに書き始めているので
最後のページに「これまで書いてあることは全部ウソである」
と元気だったころのオヤジならやりそうだが。。。
ふたりが神妙な面持ちなので、そんなオチは無いだろう。
しかし、3か月も何を書いていたのか
非常に気になる終活ノートだ。
そう言えば終活ノートと言えば、一番気になるのは
「遺産をどうするこうする」
という遺産に関する言及だ。
まあ、オヤジが俺や弟のどちらかに肩入れするような
贔屓体質は一切なかったのでその辺は気にしていないのだが。。。
なんて、あまい事を考えていた俺は
次回、奈落の底に突き落とされることになる。
俺の新しい家の話、今日はここまで。
次回予告
実家で出されたオヤジの「終活ノート」。
オヤジが3年前に3か月かけて記載したシロモノらしい。
その存在は聞いたことはあったが
まさかオヤジがそんなものをつけていようとは
想像もしなかった。
しかも、オヤジの「死ぬまで見せるな」という言いつけをオフクロは無視して
このタイミングで出してきたことに
何かしら意図を感じる。
その終活ノートには。。。
お前ら、家は「建てたい」と思ったときに建てておくんだな!
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