建築日記第1話「やっぱりおうちたてようかな」はコチラから!

第84話 最後の晩餐

八郎だ(Twitter:@eightblog_hachi)
毎日の人も、久々の人も、初めての人も
ここへの訪問に深謝だ。
この物語は注文住宅について何の知識も無い夫婦が
思い立って注文住宅を建てようとしたら
どうなったのかを描いた「フィクション」だ。
良かったら立ち寄っていただきたい。

    

前回のあらすじ。

   

家づくりの資金援助をお願いしに実家に赴くも
オヤジの「終活ノート」に
『全財産はオフクロに引き継ぎたい』
と書かれており、援助の依頼を1度断念した俺だが。

やはり家づくりを諦める事が出来ず
オヤジの意識がはっきりしている日をオフクロに教えてもらい
その日に実家に押しかけて、オヤジに嘆願することに決めた。

               

最初で最後のマイホームのチャンスになるであろうこのタイミング。
ここを見過ごすと一生後悔しそうな希ガス。
今まで臭い物にフタをしてきた俺が
久しぶりに難関に向き合う時が来たようだ。

        

果たして、俺はオヤジを話をすることは出来るのか?

                         

ちなみに最初からこの話を読んでみたい
という奇特な方にはこちらのリンクを紹介しよう。

それでは、今日も俺の家の話を始めよう。

今日はオヤジが調子がいいらしい

オフクロにマイホームの資金援助の話をして
オヤジが意識がしっかりしている時に話をしたい
とお願いしてから1週間くらいが経過してから。
オフクロから「オヤジの調子がいい」と言う電話が来た。

         

今日のオヤジは饒舌らしく、冗談や昔話も出るらしい。
俺が来た時とはコンディションが全然違うようだ。
恐らく、介護に向き合うという事は、本当に大変な事なのだろう。
こうして、オヤジの意識がはっきりしている時もあれば
家族のメンバーも認識出来ないくらいぼんやりしている事もある。

      

そして間違いないのは、そのサイクルを繰り返しながらも
決して状況が良くなることはなく、だんだん悪くなっていくのである。
看取る方の精神力も試されるのが介護だと痛感した。

        

この前のオヤジの状態を目の当たりにして
今日はオヤジに俺は普通に話をすることは出来るのか?

         

オヤジに話をする前から
俺は既に試されているような気になってた。

 

八郎「こんばんは」

             

仕事もそこそこに切り上げて、車を駆って実家に着き
深呼吸をして玄関のドアを開ける。

         

オフクロ「入ってきてー」

       

家からは懐かしいがめ煮の匂いが。
オフクロは料理をしているのか、玄関には出てこなかった。

       

八郎「おう、入るぞー」

        

玄関を抜けてリビングに向かう。
果たしてオヤジはどんな姿で待っているのか。

        

オヤジ「おう」

        

リビングのドアを開けると、そこにはオヤジがいた。
ただ、前回と違うのは、テレビをしっかり見ていたし
俺が来たときは、反応して顔をこっちに向けて
あいさつもした事だ。
あまりに違う反応に、まずは面食らってしまう。

       

しかし、改めてオヤジの姿を見て
俺の気持ちはささくれ立った。
薄くなった髪の毛、やつれた顔
不自然に色黒な肌。
この前はオヤジの反応にばかり気を取られていたが
今日は状態の良さそうなオヤジに一瞬ホッとしかけたが
実は全然状態が良くないじゃないか。
そんな気持ちに支配された。

何のために家を建てるのか

八郎「オヤジ、調子はどう?」

       

なかなか言葉が思いつかず、出た言葉がそれしかなかった。

        

オヤジ「まあ、見ての通りだ」

        

オヤジも意地悪な返答だ。
いいとも悪いとも言わない。
質問した人間が困るような返答。
まあ、ある意味オヤジらしい返答ではあるが。

        

八郎「壮健そうで何より」

       

俺もオヤジに合わせて返答しておいた。
しかし、オヤジは俺の言葉には意に介さず
いきなり直球で聞いてきた。

       

オヤジ「俺に話があるらしいな」

八郎「」

        

あまりにいきなりすぎて、言葉を失った。

      

オフクロ「お父さん、気になってるみたいで」

         

オフクロも合の手を入れる。

        

オヤジ「どうせ、俺が死ぬ前に金寄こせとか、そういう類だろ」

八郎「」

        

あまりに核心過ぎて、心臓が止まりそうになる。
俺は慌ててオフクロを振り返るが
オフクロは首を横に振る。
事前に話をしておいた訳ではないらしい。

       

逆にオヤジが茶々を入れてくれたことを逆手に取ろう。
むしろ、頼み事を切り出しやすくなったとも言える。
俺も、藤川球児火の玉ストレートはりに
オヤジにド直球をぶつけてみた。

           

八郎「実は、家を建てたいんだが、金が足りない」

八郎「だから、オヤジに援助をしてほしい」

オヤジ「ほぉ。。。」

        

今度は俺があまりに直球できたので
オヤジがびびっているようだった。
しかし、もっともな質問が返ってきた。

       

オヤジ「今更、何のために家を建てようと思ったんだ」

八郎「今更。。。何のため。。。か」

八郎「確かに今更的な感じはある、それは否定できない」 

オヤジ「。。。」

八郎「ただ、理由はある、それは。。。嫁のため、かな」

オヤジ「ほお、嫁ちゃんさんのため、か」

八郎「うん、嫁はマイホームを建てるのが一生の夢だったらしい」

八郎「でも、俺に遠慮したり、俺がまともに嫁の夢に向き合ってあげてなくて」

八郎「それを嫁はずっと我慢していたことを、最近知ってさ」

八郎「俺も嫁には随分世話になったし、恩返しもしないといけないなって」

八郎「それが、理由かな」

          

それを聞くと、オヤジは暫く方向にならないような方向に
視線を投げかけ、じっと考えていた。
しかし、程なく

        

オヤジ「いくら要るんだ」

八郎「。。。500万円」

オヤジ「。。。いいだろう、嫁ちゃんさんの為に使うのなら許す」

八郎「。。。ありがとう」

       

オヤジが一瞬黙ったあの刹那
何を思い、なぜ黙ったのか。
それは今でもわからないままだ。
でもオヤジは、資金援助を約束してくれた。

       

オフクロ「はい、話も終わったみたいだし、夕飯にしましょうかね」

オフクロ「八郎、あんた食べていきなさい」

八郎「ああ、わかった」

最後の晩餐 

それから、いつぶりだろうというくらいに久しぶりに
俺と、オヤジと、オフクロの三人で食卓を囲った。

       

オヤジはいつになく饒舌で
俺が大学に進学するために上京した後の
実家のエピソードを色々と話してくれた。

        

俺がいなくなった後、オフクロが暫く泣いていたことや
弟が免許取った後にいきなり実家の車をぶつけたことなど
今まで聞いたことない話を頼んでも無いのに
いろいろと披露してくれた。
そして、三人で屈託なく笑った。

         

オヤジが倒れてから、俺は実家に行き辛くなった。
しかし、それは俺が勝手にそう思い込んでいただけで
俺が自分で壁を作っていただけだった。

         

八郎家は、変わらずそこにあった。
しかしオヤジは調子の良し悪しを繰り返しながら
確実に最期に向かっている。
今は変わらずそこにあっても
いつの日か「そこ」には無くなる日が来るのだ。

       

俺はオヤジに向き合おう。
八郎家が「そこ」にある残り少ない時間を
ちゃんとオヤジと共有できるときは共有しよう
そう誓った。

          

八郎「じゃ、明日も早いし俺、帰るわ」

オフクロ「気を付けて帰りなさいよ、運転、ゆっくりね」

八郎「おう」

         

オフクロのいつもの言葉だ。
俺はオヤジの目をまっすぐに見てこう言った。

        

八郎「オヤジ、また来るよ」

オヤジ「おう」

       

オヤジは座ったまま軽く手を上げて俺を見送ってくれた。

          

そして、この日が
俺とオヤジとオフクロの三人の最後の晩餐になる事を
俺はまだ知らないのであった。

         

俺の新しい家の話、今日はここまで。

次回予告

オヤジから住宅資金の援助を取り付ける事にした八郎。
金額は500万円。
しかし、生前贈与には用途と非課税枠の金額もある。
その辺をしっかり勉強しておかないと
後から追徴されることになりかねない。
1度、その辺をしっかり調べてみる事にした。

          

次回「住宅を購入するための生前贈与っていくらまで非課税なの?」

お前ら、家は「建てたい」と思ったときに建てておくんだな!

このブログはフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。尚、どこかで聞いたことあるような話もあるかもしれませんが、全て筆者の作り話ですので現実になぞらえて考えないようにお願いします。読んで気分が悪くなる方は読むのをお控えください。

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