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コロナウィルス第七波感染?騒動記その(6)[際限編]

今や人口の11人に1人が
コロナ感染経験者と言われている日本。

      

そんなコロナ第7波の終わりなきピークに起こった
ひとりのおっさんの話を聞いていただきたい。

       

経験された方はご存知かと思うが
これは個人の問題だけでは終わらない。
家族や会社を巻き込む、大きな問題へと
発展しかねない、由々しき問題である。

      

そこで経験した出来事や
心情を共有してほしくて
この番外編の筆を執る事にする。

     

ちなみに以前の記事を読まれてない方は
コチラのリンクからお読みいただきたい。

騒動記その(1)[疑惑編]

騒動記その(2)[露呈編]

騒動記その(3)[苦悩編]

騒動記その(4)[選択編]

騒動記その(5)[絶望編]

出勤

八郎「じゃあ、行ってくる」

嫁「気を付けてね」

       

ここだけ切り取れば普通の出勤シーン。
しかし、今日は自分の人生を変えてしまうかもしれない
重要な決断をした朝だった。
努めて普通に出勤する事にする。

        

蝉の鳴き声が普段より大きく聞こえるが
蝉の鳴き声以外聞こえない。
車内に入るといつもの生温い空気がまとわりついてくる。
いつもならクーラー最大にして
不快な空気を一掃するのだが
今日は発熱しているからか、この生温さが心地よい。

        

いつもは青歯でスマホをつなげて
テンションが上がる音楽をかけるのだが
今日は無音のまま、パーキングブレーキをリリースする。

        

やや咳が出て、少し頭にモヤがかかっているみたいになっているが
運転に支障はないし、業務も全然できるレベルだ。
しかし、気を引き締める意味でも
運転には細心の注意を払う事にする。

        

流れが幹線道路に乗ると、早くも
いろいろな思考が頭に流れ込んでくる。

          

俺が出勤するという事は。。。
嫁も当然出勤する。
三女も行事の準備で登校する。

        

コロナかどうかはわからないけど
恐らくコロナであろう俺
コロナにかかっているかもしれない
嫁と三女を、それぞれのコミュニティに
放流してしまってよい物なのか。

       

もし俺だけでなく嫁も、三女もかかってしまっていたら?
このご時世、持ち込んだ人間が周囲から
糾弾されるような事は無いだろう。
しかし、嫁も三女も少なからず肩身の狭い思いはするに違いない。

       

そして、感染した人間の中には俺みたいに
悩む人間も出てくるかもしれない。
別に悪いことは何もしていない
密になるような場所にもいっていない
感染のリスクが高まるような事もしていない。

       

でも気がついたら具合が悪くなって
気がついたら10日間の自宅待機を命じられ
気がついたらひとりで悩んでしまっている自分がいる。

       

俺みたいにエゴで動いてしまってがために
真面目に仕事や学校に行っている人たちを
貶めるような事をしてしまっていいのだろうか?

際限

ふと気がついたら、自宅からB営業所まで
約半分の道のりを消化していた。

      

自分は何も結論を出せていない。
B営業所に向かう今もなお
悩みに明快な解決策を見いだせないまま
職場に向かおうとしている。

        

これでいいのだろうか。。。

       

こじらせた厨二のような
同じ思考の堂々巡りを
47のおっさんがハンドル握りながら
やっているだけに質が悪い。

       

家の階段を降りて会社に行く決意はどこへやら
迷える子羊に逆戻りである。

        

そうこうしている内にB営業所が
残り1kmのところまで迫って来る。
このまま車を営業所に滑り込ませたら
良くも悪くも出勤確定。
もう後戻りできない。

         

そんな中、その手前にある全国的にも有名なコンビニに
車を滑り込ませる八郎。
本当に後悔しないのか
心の中の俺全員と「心の会議」をするために。

       

そのコンビニはロードサイドの繁盛店のようだ。
駐車場もやや広めで、大型トラックが止まるスペースもある。
お客さんは車中心だがひっきりなしに入出庫があり
回転も非常に良い。
そんな中10分も止まっている車は
かなり異質、いや迷惑であっただろう。

        

お義理のガムを買う事もせず
駐車場に居座り、最後の『心の会議』を開催する。
家の中で心の会議を開催していた時は
家にいるからか家族の事(=三女)
を慮る気持ちが強かった。

      

しかし、これが職場近くで押し問答を始めると
風向きが変わっていることに気がつく。
気がつけば
「家族が大事!社会なんか知らんぷり」派から
「社会人としてやっていいこと悪いことくらい分かれよ派」
が優勢になっている。
やはり職場を間近に控えているだけに
職場での妄想のイメージに拍車がかかっている事も
後推しの原因になっているようだ。

       

そして、自分の体調である。
ノーエアコンに窓全開という
エアコンの無い時代の車のようなスタイルで
小1時間運転した結果かどうかはわからないが
確実に熱は上がっているように感じる事。

      

そして、何より咳がもう隠せないレベルまで
出てきている事言う事。
これは無理を押して出社しても
ゴホゴホやられたらそれだけで相当な
迷惑をかけそうな事に今更ながらに気がつく。

     

そして最大の決め手になったのは
もし三女を優先して報告をせずに仕事をしたとしても
数日後に三女が発症してしまえば
自分のやった事はすべて無駄になるという事。
それくらい、家族感染が今回は猛威を振るっていることを
事前に聞いていたというのも大きい。

          

こうして俺は
際限で踏みとどまった。

翻意

八郎「嫁ちゃん?俺だけど」

嫁「八郎ちゃん、どうしたの?」

八郎「。。。ごめん、やっぱり会社行くのやめた」

嫁「そっか」

八郎「営業所の近くまで行ったんだけど」

八郎「父親八郎より、社会人八郎が勝ってしまった」

嫁「うん、わかったそしたら私も」

嫁「自分の職場と、三女ちゃんの学校に連絡を入れるね」

八郎「うん。。。申し訳ない。。。」

       

嫁の「三女ちゃんの学校に連絡を入れるね」
という言葉に、きゅっと心臓を握られた気がした。
三女はこれで、学校行事に出られない可能性は高くなった。
後は奇跡の八郎PCR陰性に賭けるしかない。
。。。しかし、もし俺が陰性なら
然るべき期間家族が自宅待機をして
発症しなければ、両手を振って
社会復帰できる訳で、コチラの方が
後ろ指指されることなく
その後の活動に専念できる、というメリットはある。

       

。。。俺が陰性なら、の条件付きだが(笑)

       

嫁「行きつけの内科を予約しておこうか?」

八郎「うん、お願いしてもいい」

嫁「OK、じゃあ行ってくるね」

         

行きつけの内科、そこは八郎たちが
この地に越して約20年が経過するが
風邪関係は99%その病院に行っている。
先生も家族構成まで覚えて頂いている病院だ。
特に娘たちは本当にお世話になっている内科。

     

しかし嫁が言う予約、と言うと聞こえはいいが
実際は7時に個人医院の玄関ドアだけ開錠されるので
そこにあるノートに名前を書きに行くという
なかなか原始的なやり方である。
このやり方も20年変わっていない。
Web予約とかが普及しつつある中で
あえてこの内科がこの方法を取り続けているのは
早起きしてその病院に行けば
誰でも早く受信できる権利を有することが出来る
という、ある意味老若男女に平等な仕組みなのかもしれない。
Webだと高齢の方には不利になりやすい。

        

さて、嫁の電話を終え、後は車で引き返す。。。
では終わらない。まだ、やらねばならぬことがある。
それは。。。
B営業所の所長への電話である。
昨日打ち合わせをして、今日からバリバリ働く予定が
いきなり穴を空ける訳である。

        

この電話この電話で気を遣うし
気が乗らないしという電話だが
こうなってしまった以上、仕方がない。
通話履歴から、B所長の電話番号を探す事にする。
(次回へ続く)

        

ギリギリのところで出社を取りやめて
会社に発症を報告する事にした八郎。
次は、B営業所の所長に詫びを
入れなければならないのだが。。。

       

次回「コロナウィルス第七波感染?騒動記その(7)[難儀編]」

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