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第29話 果たして、嫁の「間取り赤ペンファイル」は更新されるのか?

八郎だ(Twitter:@eightblog_hachi)
毎日の人も、久々の人も、初めての人も
ここへの訪問に深謝だ。
この物語は注文住宅について何の知識も無い夫婦が
思い立って注文住宅を建てようとしたら
どうなったのかを描いた「フィクション」だ。
良かったら立ち寄っていただきたい。

    

前回までのあらすじ。

       

嫁はマイホームの夢を諦めていなかったのか!?
ポスティングや折り込みチラシの
住宅販売の間取りを切り貼りし
赤ペンで自分の間取りに対する想いをしたためて
クリアファイルに綴じていた。
その量たるや、ファイル3冊半。

俺は嫁に事あるごとにマイホームは買わない!
と断言していたが、嫁は諦めきれなかったようだ。
そんなマイホームの夢を、チラシがあるごとに
自分の想いをしたためファイリング。。。

        

俺は嫁に、俺の人生の夢を叶えてもらった。
今度は俺が、嫁の人生の夢を共に叶える番ではないのか?
もし、そのクリアファイルの途中で終わっている
間取りの切り貼りが、この後も増えるようなら。。。
まだ、嫁は心に自分の夢を温めていれば。。。

        

旦那としてやるべきことがあるのではないか。

       

それでは、今日も俺の新しい家の話を、始めるとしよう。

クリアファイルの中身は増えるのか?

3冊半にも及ぶクリアファイルには
チラシの間取りの切り抜きと
嫁の想いの丈を綴った赤ペンの文字がギッシリ。
果たして、この中身は今後も更新されるのか?
俺の焦点はこの1点に絞られた。

       

それから、社会人になって初めて
郵便受けの中身が気になった。
今まで郵便受けの中身を覗くことなんて
殆どなかった。
いわんや、回収することなぞ
1度たりとも無かった。
自分は郵便物にはまるで興味が無い。
嫁が郵便物を回収してくれて
初めて自分宛てに郵便物が届いていることに
気が付くくらいの興味の無さだ。

       

しかし、近年初めて
郵便受けの中身が気になった。
その理由は当然

間取り図が付いた住宅販売のチラシが入らないか

である。もちろん俺が見る前に
嫁が回収してしまう場合もある。
しかし、その時はその時。
今度は嫁が仕事で家を不在にしている時に
クリアファイルを覗くだけだ。
嫁が最後に切り貼りした間取り図は
頭に焼き付けた。もし
チラシの確認が出来なくても
切り貼り赤ペン先生の更新があれば
嫁はまだ、マイホームの夢を
諦めきれていないことになる。。。

        

そんな事を考えながら郵便受けを見る事数日後。
早くもジャッジメントタイムが
訪れようとしていることを悟ることになる。

       

なんと、郵便受けに建売のチラシが入っていたのだ。

        

八郎「むむむっ。。。(-“-)」

       

思わずチラシを手に取ってしまう。
何の変哲もないただの建売のチラシだ。
素人の俺が見てもわかる
ゆったり一軒家が建っていたところを
無理無理二棟建てたような間取りだ。
こんな間取りに嫁は反応するのだろうか。。。

嫁は案外「グルメ」だった、という事は。。。

思わずチラシを家の中に持ち込もうとして
はたと気が付く。
普段、郵便物をいっさい家に持ち込まない男が
建売のチラシをわざわざ家に持ち込むなんて

超絶怪しまれるに違いない

という事で、チラシは郵便受けに再投函(笑)
自分の家の郵便物を自分の手で投函するという
人生でもそう経験する人はいないであろう所業を成し
家に勝って嫁の反応を待つことにする。

       

-その夜-

嫁「ただいまー」

八郎「おかえりー」

嫁「いやー疲れたー」         

八郎「!!!」

      

嫁の手には例の建売のチラシが握られていた。
嫁は確実にこのチラシを認識した。
後は、クリアファイルの中身が増えるのか
それとも増えないのか。。。

       

最後のクリアファイルの中身も確認済だし
今回の建売もチラシの間取りも確認済。
もし増えればすぐにわかる。
とりあえず、様子をうかがう事にする。

        

-それから数日後-

嫁が出勤で、俺が休みの日の朝が来た。
審判の日、である。

       

嫁「じゃあ、行ってくるねー」

八郎「行ってらっしゃい!」

      

嫁は元気よく、何事も無かったかのように家を後にする。
こっそりベランダのカーテンから嫁が
チャリンコに乗って会社に行く様子も確認した。

          

さあ、キャビネットだ。

       

キャビネットを開け、例のファイルを探す。
1回マジマジと見ているので
それはすぐに見つかった。

        

運命のオープン。
複雑な気持ちで、ファイルを開く。。。!

        

八郎「」

        

そこには。。。更新された形跡はなかった。
拍子抜けするような、ほっとするような
複雑な感情が一瞬浮かんだが
すぐにとある「疑念」が感情を支配する。

       

果たして、あの間取りは嫁が思いを込めたくなるような間取りだったのか?

        

建売2棟のチラシだったが
前述のように1棟敷地に無理やり2棟建て。
間取りも金太郎飴のようなミラー間取り。
これに、嫁が反応しなかっただけかもしれない。

      

もっと目を引くようなチラシが入るまで
判断するのは待つことにした。

ついに、オサレな建売のチラシが入る、その結果

そこから、また郵便受けを覗く日々が続く。
こんなにポスティングのチラシが気になる事は
これからの将来でも絶対にないであろう。
今、この時だけである。
そして、このチラシ如何で、今後の俺の人生が
大きく変わるかもしれないのだ。
毎日、郵便受けを覗くのに心が震えてしまう。

       

そしてついに1週間後、その時が訪れる。
今度はオサレな建売2棟のチラシがポスティング。
外観もまあまあオサレ。これは嫁の琴線に触れそうだ。
これでもファイルの中身が更新されないのであれば
その時は、嫁はマイホームの夢を諦めているのかもしれない。
そう思い、郵便受けのチラシはそのままに
嫁の帰りを待つ。

       

その日の夜。
やはり嫁は建売のチラシを手に帰宅する。
確実にチラシの存在は認識している。
しかも、明日嫁は休み、俺は出勤。。。
ややもすれば、明日、あのクリアファイルの
間取り赤ペン先生は更新されているかもしれない。
ザラついた心を鎮めながら
俺が休みで嫁が出勤の日を待つ。

       

俺の休みの日、そして嫁が出勤の日が来た。
また、チャリンコで出勤する嫁を確実に見届け
またしてもキャビネットを開く。

       

そして、更新途中のファイルを開こうとして
異変に気が付く。
間違いなく触っている、触ったと思われる感じがある。
以前収納した時とは、明らかに異なる形跡がある。

           

やや、覚悟にも似た気持ちで、ファイルを開けると。。。

       

ファイルはしっかり更新されていた。
外観はおしゃれでかわいいけど
間取りについては不満を漏らすような
コメントが赤ペンで記載されていた。

       

嫁は「グルメ」だったのだ。
全部の間取りにコメントしている訳では無かった。
自分が気になった間取りしか、切り貼りしてなかったのだ。

      

。。。だとすると、取捨選択しながら
ひょっとすると10年以上も
この間取り赤ペンファイルをせっせと
記載していたのかもしれない。。。
そう考えると、恐るべし執念
いや、ここまで来たら情念かもしれない。

         

嫁は自分の想いを10数年
このファイルに込めながら
やり場のない気持ちを逃していたのかもしれない。
建てれない寂しさやわびしさを
このファイルで紛らわせていたのかもしれない。

       

旦那として
嫁のよきパートナーとして
そしてなにより「男」として

      

決断の時が来たのかもしれない。

        

俺の新しい家の話、今日はここまで。

次回予告

更新された間取り赤ペンファイルを
嫁の前に出す決意をする八郎。
そして、一世一代の決意の前に
嫁にひとつ、質問をすることにする。
その答えはあまりに切ないマイホームへの
想いが語られるのであることを
この時、まだ八郎は知らないのであった。

       

次回「嫁はなぜマイホームにこだわるのか?賃貸ではダメなのか?」

お前ら、家は「建てたい」と思ったときに建てておくんだな!

このブログはフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。尚、どこかで聞いたことあるような話もあるかもしれませんが、全て筆者の作り話ですので現実になぞらえて考えないようにお願いします。読んで気分が悪くなる方は読むのをお控えください。

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