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第11話 弟、強引に兄の後をついてくる

八郎だ(Twitter:@eightblog_hachi)
毎日の人も、久々の人も、初めての人も
ここへの訪問に深謝する。

      

前回までのあらすじ。

         

脳梗塞を発症し、衰えていくオヤジを
見るに堪えなくて、受け入れられなくて
オヤジの見守りや介護を放棄した
クソみたいな長男、それが俺だ。

そんな話だったな。

さて、今回は前々回の話の冒頭で書いた
「正月だ!実家に全員集合~っ!!」
の続きからだ。
そろそろ、家の話も書いていかないといけないから
身の回りの話はサクサク進めていくとしよう。

                     

それでは、今日も俺の新しい家の話を、始めるとしよう。

力ない目でテレビを眺めている

さて、2018年の1月3日。
実家に俺の家族と、弟の家族が大集合。。。
したつもりだった。

       

しかし、俺の家からは俺と嫁と次男と三男が来たものの
弟の家からは弟のみ。
まだ子供には恵まれておらず、ふたりな訳だが
今年は弟嫁の姿は見られなかった。

       

嫁「こんにちはー、お邪魔しまーす」

次男・三男「チワッス」

オフクロ「はーい、いらっしゃーい」

         

俺の家の家族4人でずかずか入っていくと
リビングにはオヤジとオフクロの他に
弟が先乗りしていた。

         

八郎「オヤジ!元気そうで何よりっ!!」

オヤジ「。。。」

       

オヤジは力ない目でラグビーを見ていたが
声がする方に目を向けたら
自分の息子らしき人間が立っていた。
そんな認識の感じだった。

       

力なく俺を見ながらすっと手を上げる。

         

昔なら俺を見ながら「おうっ!」てな感じで
オヤジなりのあいさつがあったのだが
今は、もうそれを見ることが出来ない。

     

その後また何事も無かったかのように
虚ろな目でラグビーを見始める。

      

オヤジは俺らがガキの頃から
正月は箱根駅伝とラグビーを楽しみに見ていた。
俺と弟は本当は違う番組を見たかったのだが
オヤジがいるときはテレビはオヤジが優先
という我が家の謎の掟があり
オヤジがいるときはチャンネル権は
常にオヤジにあった。

         

ラグビーはおかげで結構ルールを覚えることが出来て
ラグビーのワールドカップが日本であったときも
すんなり楽しめることが出来たのは良かったが
駅伝は確かにドラマがあって面白いのだが
じゃあ自分が正月、駅伝を楽しみに見るか、と言われれば
そんな事も無かった。
自分の卒業した大学も割と駅伝の常連校みたいだが
そもそも大学そのものに思い入れが無いので
その大学が力走しても、何の喜びも沸くことは無かった。

      

。。。ってまた自分語りしていた。
話を元に戻すと、オヤジは本当にテレビを見ているんだろうか?
そんな疑問が俺を支配する。
昔のオヤジは確かに「娯楽」として駅伝やラグビーを見ていたが
その目はすごく楽しそうだった。
間違いなく「楽しんで」いた。

      

しかし今の「力のない目」や
「眺めている様子」を見ていると
本当に内容を理解しているのか?
それも怪しい感じである。
こっそりチャンネル替えても
気づかないんじゃないか。。。

その時が近づいているのか

弟「オス」

      

弟が俺にあいさつしてくる。
先乗りして、オヤジの近くでテレビを見ていたようだ。
オヤジに気を取られていて、気づくのが遅れた。
一瞬「メス!」と返してやろうか、とも考えたが
正月早々シラケるのもどうかと思い
普通に返す事にする。

      

八郎「おう」

     

まあ、俺らのあいさつはこんなもんである。
暫く、お袋と嫁と次男三男が飯の用意をしている間
俺とオヤジと弟は無言でラグビーを見ていた。
いや、三人とも眺めていたのかもしれない。

        

ノーサイドの笛が鳴り
悲喜交々の選手を見ても
誰も表情ひとつ変えない。
試合が終わったのかさえ
わかっていないような状況の中で
オヤジが弟に何か合図を送ったように見えた。

      

弟「トイレ行く?」

オヤジ「(コクン)」

      

弟は慣れた感じで腰のあたりを引き上げる。
するとオヤジはすっと立ち上がった。
オヤジがひとりで立ち上がれなくもないが
相当な時間と労力がかかるのを知っている。
これが正に介助だな、と思ってしまうほど見事な手さばきだった。

      

その後弟は上手にオヤジを支えながらトイレへと連れて行く。
こういう姿も見てられないのでが
そんな事を言うのは失礼なので
とりあえず心の中にその思いを仕舞う。

        

その後、飯を食う準備も出来、2日遅い
「あけましておめでとうございます!」
の後、会食が始まった。
弟はオヤジの横でオヤジが食うのを手伝っている。
食べやすい大きさに食事を刻み
オヤジに食わせていた。

         

俺はその様子をなるべく見ないようにしながら
わさびをたっぷり付けた寿司を口に放り込んだ。
ツンとした、ワサビの感覚が舌から脳天へと突き抜ける。
俺は生まれて初めて、ワサビの「ツン」に感謝した。

           

みんながわさわさ食べている間も
弟はオヤジにずっと食べさせ続けていた。
見たくないのに見てしまってわかったのは
寿司1貫を弟は4等分にし
それを1つずつ、口に運んでいた。
俺なら1巻10秒で食べれるが
オヤジは弟のフォローありでも
1貫を食すのに3分くらいかかっていた。
その間、弟は何も食べずに
ただただオヤジをサポートしていた。。。

         

そんな二人を見たくなくても
つい俺の目は追ってしまう。
しかし、その行動はそう長くなかった。

       

弟がオヤジの口にスプーンを運ぶと
オヤジが顔をそむけたのだ。

      

弟「オヤジ。。。もう食べないのか?」

       

オヤジはこくんと首を縦に振った。
口でしゃべるでもなく
リアクションでの意思表示。
これも少し寂しい感じがしたが
それよりも食べる量が圧倒的に少ない事に
素直な感想を弟にぶつけることにした。

       

八郎「オヤジの食って。。。今こんな感じなのか?」

弟「ああ、かなり細くなったね」

八郎「俺が買ってきた寿司がまずかったとか、そういうことか?」

弟「いや、そんなんじゃないと思う。いつもこんな感じだな」

      

いつもこんな感じなのか。。。
俺は愕然とした。
人間、飯が食えなくなると一気に悪くなる
と言うのは嫁のご両親で目の当たりにした。
オヤジももうそんな状況が近づいているのかも。。。
そう思うと、心臓を冷たい手で鷲摑みされるような
気分になってしまう。

気まずいふたり

みんなで飯を食い終わって談笑していると
オヤジがウトウトし始めた。

        

弟「オヤジ、寝るか?」

オヤジ「(コクン)」

       

すると弟がベッドへオヤジを誘う。
暫くすると弟がリビングへ戻ってきた。

       

八郎「オヤジ。。。随分痩せたな」

弟「まあね、色が細くなったからね」

八郎「あんまり食べてないのに、眠たくなるものなのか?」

弟「あれも。。。脳梗塞の症状なんよ(※個人差がありますので、そうならない場合もあります)」

八郎「え?どういうこと???」

弟「脳梗塞なんかで脳に酸素が行き渡りづらくなると」

弟「酸素不足になり眠くなることが多くなるらしい」

八郎「そんな事があるのか。。。」

        

脳梗塞というのはとても奥が深い。
弟は医療の現場でいろいろ見てきているので
ある意味当たり前の光景なのかもしれないが
自分にとっては全てが驚きの連続だ。

      

その後、オヤジについての話で話が盛り上がる中
俺は冷たいお茶を飲もうと大型ペットボトルに
手を伸ばすと、それが空になっている事に気がついた。
寿司を食べた手前、喉も乾くようだ。

       

八郎「ちょっと、ペットボトルのお茶買ってくるわ」

      

俺はそう言って実家を出た。
踊り場でエレベーターを待っていると
後ろからドタドタと音がするので
振り返ると。。。そこには弟がいた。

        

弟はタダならぬ雰囲気を放っていた。
鈍感な俺でも分かる空気感だ。
俺は即座に弟と交わるのは危険だと察した。

        

八郎「。。。なんだよ」

弟「いや。。。俺も飲み物を買おうかと思って」

八郎「へえ、俺、大型ペットボトル買うつもりだから少し飲ませてやるよ」

弟「。。。いや、甘い物が飲みたいんだ」

八郎「。。。銘柄言ってくれれば、俺が買って来てやるよ」

弟「。。。いや、店頭で見て気分で決めたいんだ」

八郎「。。。」

      

色々言って、弟をこの場から引きはがそうとしたが
弟は何らかの意思を持っているようで
ここから離れようとはしなかった。
仕方なく、弟が付いてくることを諦めることにする。

       

エレベーターが1階へ下っていく間。
無言を貫くふたり。
こんなに息が詰まる空間も久しぶりだ。
嫁と喧嘩してもこんな空気にはならない。
今にも肩と肩が触れ合いそうな距離だが
俺は絶対に弟の肩に触れまいと
エレベーターの壁に必死に
自分の身体をなすりつけていた。

    

エレベーターが開くとまず弟が出る。
続けて俺も出る。
1階のエントランスを弟が出る。
そして俺も出る。
そこで、弟がコチラを振り返った。

       

弟「。。。兄貴に話がある」

      

なるほど、そう言う事か。
何か言いたいから変な空気を放っていたのか。
まあ、たまには逃げてばかりいないで
話を聞かないといけないだろう。

      

八郎「わかった、コンビニで買い物をした後、川辺で聞くよ」

      

俺の新しい家の話、今日はここまで。

次回予告

弟とタイマン、と言っても話すだけだが
をしないといけなくなった俺は
実家の近くを流れる川沿いで話をする事に。

      

そこで、弟から魂の叫びを聞かされることになる。
俺は、どこまでクズなのか?
ちなみにこのブログは
「介護日記」ではなく「俺の新しい家の話だ」
それだけは覚えておいてほしい。

       

次回「弟の指摘と告白と焦りと動揺」 

お前ら、家は「建てたい」と思ったときに建てておくんだな!

このブログはフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。尚、どこかで聞いたことあるような話もあるかもしれませんが、全て筆者の作り話ですので現実になぞらえて考えないようにお願いします。読んで気分が悪くなる方は読むのをお控えください。

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